歌うための呼吸法

<意識を常に外に向ける>
 発声や呼吸法を考え、実践する時、ともすると意識は身体の内側へと向かってしまいます。もちろん身体を意識することは大切なことですが、歌うことへと繋げるためには、歌が響き出す外の空間に意識を向けて発声や呼吸法を実践することがとても大切です。例えば、息でろうそくの炎を揺らしてみる。あるいは、自分が息を吐くことで周りの空間の在り方が変わるというようなイメージを持ってみる。外に対して働きかけてゆく意識を忘れないことが大切です。

<丹田が中心>
丹田とは、おへその下3寸(へそと恥骨の間を5寸とする)かつ、身体の中央に位置するところをさします。ここが自分の精神の中心であり、歌声はここからわき上がってきて、外へと響き出します。腹から声を出す感覚です。

<基本>
1.丹田に手を置き、意識をしっかり外に向けて、息を吐いていきます。このときに丹田がぎゅうっと縮んで、下腹部がへこんでゆきます。手でそれを確認することで、意識が必要以上に身体の内部に向かわなくて済むようにします。
2.吐ききったら、丹田の緊張をふわっと緩めます。そうすると自然に息が入ってきます。
3.緩んだところが風船のように膨らみ始めます。下から上にむけて徐々に息が入ってきます。腰骨あたりから背骨にかけて上に伸びてゆくような感覚。内側から外に向かってしなやかに膨らんでゆきます。胸が大きく広がり、気持ちが外に向かって開かれてゆくイメージを感じましょう。この時も意識は常に外に向かうように努めましょう。
4.豊かに膨らんだ胴体を緩めると、息が外に解放されてゆきます。いっぱいになった胸から気持ちが溢れ出すように。ことのきも意識を外に向けて関わってゆく感覚が大切です。
5.やがて息は緩んで止まります。が、止まる前に1.にもどり、丹田を引き締めて続けて吐いていきます。こうして深い呼吸を連続して行ってゆきます。

<呼気と吸気の変わり目>
呼気から吸気へ、吸気から呼気へと変わる時は、常に緩む感覚が重要です。

<気を発して、外に関わってゆく>
例えば、大きなものを押して動かすとき、それを押す手が息で、踏ん張る足が丹田、というイメージです。

<歌へとつなげる>
歌うときの息は、呼気が長く、吸気が短くなります。ですから、上の呼吸法で、しだいに吸気の時間を短くしてゆきます。
ゆっくりとした8拍子でやってみましょう。
1から6まで吐いてゆきます。7で丹田を緩め(2)、8で丹田から息を吸ってゆきます(3)。
慣れたら、1から7まで吐いて、8で緩めて吸いましょう(2、3)。

<声を出す>
ゆっくりとした8拍の呼吸法で声を出してみましょう。
まずピアノでドミソ(c/e/g)の和音を響かせます。ドの音程で「ラ」で歌ってみます。このときピアノは適度な間隔で和音をならしてゆきます。
丹田でピアノの響きを良く感じてみましょう。身体と気持ちを調えて、意識を外に向け、ピアノの響きと調和するように迷わずに声を響かせます。外に響き出した声がピアノの響きと調和するように、意識を常に外に向けます。

<音階練習>
ハ長調(C-dur)の音階を「ラ」で歌います。ゆっくりとした8拍に乗って、[ドー]、[レー]、[ミー](発音はラ)と音階を上がってゆきます。ピアノは音程に合わせて、和音を展開していゆきましょう。丹田を緩めて息を吸うときに、次の音程を感じます。つまり、[ド]を6拍響かせたあと、7〜8拍目の吸気のときに意識は[レ]にかわります。これを順次展開してゆきます。吸気で変わるのは音程だけでなく、気分も変わると良いでしょう。例えば、階段を1段上がると、見える景色がかわり、気分もかわるといったように。

 

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