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ガブリエル・フォーレ  Gabriel Faué (1845−1924) フランス
夢のあとに  詩:ロマン・ビュシーヌ Après un rêve  Romain Bussine (1830-1899)

君の姿に魅了され まどろみの中
燃え立つ幻のような幸福を私は夢見ていた
君の瞳はかくも優しく その声は澄み 響き渡る
君は光っていた あけぼのに輝く空のように

君は私を呼び 私は地上を離れ
一緒に光の方へと逃げ去っていった
空は私たちに雲を開き
そこにかいま見た未知なる輝き、神の閃光よ

ああ しかし 悲しき夢の目覚め
私は呼びかける おお夜よ おまえのいつわりを返しておくれ
再び戻り来れ 輝きよ
今一度帰り来れ おお 神秘なる夜よ

Dans un sommeil que charmait ton image
Je rêvais le bonheur, ardent mirage,
Tes yeux étaient plus doux, ta voix pure et sonore,
Tu rayonnais comme un ciel éclairé par l'aurore;

Tu m'appelais et je quittais la terre
Pour m'enfuir avec toi vers la lumière,
Les cieux pour nous entr'ouvraient leurs nues,
Splendeurs inconnues, lueurs divines entrevues,

Hélas! Hélas! triste réveil des songes
Je t'appelle, ô nuit, rends moi tes mensonges,
Reviens, reviens radieuse,
Reviens ô nuit mystérieuse!

 フォーレの歌曲の中では、最も知られているといっていいでしょう。歌われるだけでなく、チェロやヴァイオリンでも演奏されます。詩の内容はとてもわかりやすく、詩と呼ぶには直情過ぎる感じもします。これは作詩者がイタリア中部トスカーナ地方の伝承詩をかなり自由に翻訳して書いたものだからでしょう。ロマン・ビュシーヌはパリ音楽院の教官で、フォーレの同僚です。
 終始刻まれる和音は、その音色の変化が美しく、初期のフォーレの歌曲の中でも抜きん出ています。連続する8分音符は、時の流れを象徴していると、一般的に言われています。抒情的に情感豊かにテンポを揺り動かして演奏されるのをよく耳にしますが、むしろ淡々と演奏してみると、過ぎ去ってゆく時のはかなさを感じられるような表現ができると思います。和声とバスと歌の旋律、この3つの要素が実に見事に詩の情感を描いてゆきます。

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